コンピューター側から見れば音のデータも映像のデータも平等なんです 佐藤理 CD-ROM作品『東脳』で知られるアーティスト佐藤理は、一方で音楽制作にも精力的に取り組んでいる。10月21日に発売されるCD『EQUAL』はそんな彼の最新作で、ゲストに坂本龍一やゴウ・ホトダ、フューチャー・サウンド・オブ・ロンドン、SENOO(École de 細野晴臣の受賞者!)らを迎えて作られたテクノ・ミュージックだ。CD-ROM作品『中天』の制作の合間を縫って作られたというこの新作について、早速話を聞いてみることにした。 ・今回はどのようなアルバムを作ろうと考えていたのですか? 佐藤 前作はCD-ROMと連携したミニ・アルバムだったんですが、今回は純粋な音楽のアルバムを作りたいというのがありました。 ・佐藤さんにとって、グラフィックやインタラクティブなどの分野と音楽との関係はどのようになっているのですか? 佐藤 基本的には一緒だと考えてるんですよ。今回のアルバムを作りながら思ったのは、今は音でも映像でも、いったんコンピューターの中に入っちゃうわけで、コンピューター側から見ればすべて同じようなデータなんですよ。単にファイル形式やサイズが違うだけで、音も映像も音楽も平等。それらを僕が独裁的に構築していく形ですね。だから今回は僕のクレジットをプログラム&デジタル・コンダクトってしたんです。 ・ほとんどの作業をプライベート・スタジオで行ったそうですが。 佐藤 ボーカルや胡弓の録りやミックスに関してはいろんなスタジオを使ってますけど、そのほかの作業はほとんど僕のプライベート・スタジオでやってます。 ・プライベート・スタジオの基本的なシステムを教えてください。 佐藤 コンピューターはPowerMacintosh 7100で、SampleCell ⅡとAudiomedia Ⅱが入ってます。ソフトはシーケンスがStudioVisionで、ReCycle!やHyperprismも使ってます。サンプラーはAKAIのS3000とCD3000で、その他、音源としてはNOVATIONのBassStation RackやStudioElectronics SE-1、QUASIMIDI Quasar、ROLAND JV-1080といったところをたくさん使いました。もちろんTR-808やTR-909もね。ミキサーはSOUNDTRACSのSoloLogicで、MTRはALESIS ADATを3台入れています。ADATは大活躍ですね・・・・・・例えば、ここで作ったものをADATに2trにして落として、テープだけ持っていろいろなスタジオに行って空いているトラックにダビングする。そして帰ってきてから使えそうなものをハード・ディスクに取り込んでエディットしたりしました。 ・いろいろなミキサーの方が参加していますが。 佐藤 自分でも幾つかやってますし、あと松本(靖雄)君やゴウさんにもやってもらってます。 ゴウさんは自分のスタジオにADATを持っているから、テープを渡しただけで好きにやってもらいました。それと別に、今回は前のアルバムやビデオCDに入ってた曲のリミックスをフューチャー・サウンド・オブ・ロンドンやトニー・モーレイにお願いしたんですけど、それはDATに1トラックずつバラで入れたものとMIDIデータ、それに曲ごとの図形楽譜を作って渡しました。 ・ミキサーを何人もの方にお願いしたというのは何か意図があったんですか。 佐藤 今はインターネットでいろいろな国へ行けるじゃないですか、だからネットワークを使って世界旅行してできた感じのアルバムにしたかったんです。 ・いろいろなミキサーが参加しているのに、全体のサウンドに統一性がありますね。 佐藤 それはマスタリング・エンジニアのケヴィン・メトカフェの力が大きいと思います。ワープ・レコードの作品を手掛けている人で、古いところでは坂本龍一さんの『B-2UNIT』のカッティング・エンジニアもやっています。 ・坂本龍一さんとも共同作業をしていますね。 佐藤 坂本さんもインターネットに凝ってらっしゃって、何らかのコラボレーションができればいいなと前から話してて、今回は自分のアルバム用に作っていたデータをインターネット経由で送ってくれました。4小節くらいのコードとメロディのデータだったんですけど、それをいろいろとエディットして使いました。 ・前作に比べるとより全体に音楽的な仕上がりになっていますよね。 佐藤 特に意識したつもりはないんですよ・・・・・・やっていくうちに自然とそうなっちゃっただけで。ただ片手間にやってるようなものにはしたくなかったというのはあります。デザインの分野ではプロフェッショナルっていう自覚はあるし、ある程度はこういうものを作ろうと思ったときにそれができる力はあると思うんですけど、音楽ではそれができない。だから音楽は自分流の部分を押し出して作っていこうと思ってるんです。