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<お知らせ>
次回2002年1月には、このスペシャルページにて、新春特別企画豪華執筆陣参加(長いぞっ!)総勢 48名による『マオマオいろはカルタ』を、フリーペーパー連動企画でお届けいたします。2002年2月からは、インタビューコーナーもリニューアルして再 登場いたしますのでお楽しみにね!
UP DATE:2001.11.30
 
人ひとりひとりに多種多様な趣味・嗜好 たわいもない小さな好みの話の中に 心棒となる哲学や思想が息づいていることも… どんなところがスキなのかキライなのか? お話いただいた方の心の内が、ほのかに感じられる 息抜きエッセイをお送りします。

  マオマオネット インタビュー第16弾
佐藤 理 Osamu Sato
2001年12月、今年最後のインタビューは、マオマオネットの編集 長でもあり、あらゆるクリエイティブ分野でも活躍中の佐藤理氏です。イラストレーション、グラフィックデザイン、音楽、ゲーム、CD-ROMコンテンツ、 展覧会企画など、ジャンルを越えたさまざまな世界で活躍している佐藤氏に、お話を伺いました。いつもはこのページで、クリエイターの方にお話を伺う立場 だったのですが、今回は聞かれる立場に変わってしましましたが、さて、お話の内容は?


道具、作品、音楽、映画、人、食べ物、酒、場所、なんでも大好きです
そして、その中でオリジンを感じるものでしょうか


 

 

 

 

 

 

 

好きなことは、モノなりなんなりを作ること。または、それを見ることや、聞くこと。 そして、その中でオリジンを感じるものでしょうか。かっこよく言うと、「永遠」って感じがするもの。オリジナリティーって永遠に在るだろうし、永遠に不滅 だと思うのです。なおかつ「ポップであること」、そして「社会性があること」です。自分でモノを作るときもそれをすごく意識します。もちろんそれがすべて 上手くいっているかどうかはわかりませんけどね…。だから、道具、作品、音楽、映画、人、食べ物、酒、場所、なんでも大好きです。いままで自分が質問する 側として、このコーナーで、いろいろなクリエイターの方々に好きなものを聞いてきましたが、この質問って答えるのが難しいですね。好きなものって、いっぱ いでてくるもんですね! 質問される立場になって気づきました!

 こうなったら、もう好きなものを羅列していっちゃいましょうかね。

 道具だと、古民具。特に古伊万里。毎週骨董市にでかけます。ただ、基本的に使う骨董なので、そんなに高いものは買いません、幕末から明治くらいのもの、明治のベロ藍とかが、好きです。陶器や土器は、「永遠」を感じますね。

 芸術作品だと、好きなものはいっぱいありすぎますが、どれかひとつ選ぶとすれば、ロシアアバンギャルドの作品群。たぶん一番好きだと思います。赤と黒と矩形と円のコンポジションとタイポグラフィーは、僕には、永遠の美しさです。

 音楽は、作る側と聞く側でちがいますね。作る側に立つと、「自分のオリジンがどこにあるか」「自分は何か」ということをすごく考えます。簡単にいうと、 僕がやっていい音楽は、テクノを含む現代音楽、現代の音楽だけだと思っています。BEATLES やROLLING STONESで育ち、FUNKやSOULをこよなく愛していますが、どう考えても、僕のオリジンの中にはそれらの音楽の遺伝子は存在しないんですよね。だ からそうなりたいとは考えない。もちろん、コラボレートはできるかもしれません。ただし、いまのところサンプリングということが多いのですが。あらゆる種 類の音楽も、サンプリングした点でデータとなり、すべてが同じ状態となって、僕が新たに創りだすことができる。ある意味で、独裁者になれるんだと思いま す。ただしこれもあくまで、現代の音楽を作るためです。

 映画。これも難しいです。強いていうなら、『気狂いピエロ』。これこそ永遠のテーマでしょう。見てない人は、見てください。あらゆる意味でカッコイイです。

 人。難しいです。歴史上の偉人のことをいっても、しようがないので、最近の人でいえば、野茂英雄でしょうか。彼がオリジンです。イチローではありません。そして永遠なのは、巨人軍だけではありません。ちなみに僕は、子供のころは野球少年でした。
 食べ物。これは食べる場合と作る場合でちがったりします。食べることでは、自分で作れないものが好きでしょうか。蕎麦なら藪、中でも上野の藪が一番好き です。寿司なら、江戸前。ただ、実家のある京都でたべる鯖寿司も捨てがたい。蕎麦や寿司だったら何でもいいというのじゃなく、おいしいものはなんでも好き なんですけど。そういうと、べつにおいしいものだったら、なんでも好きですね! だれでもそうだろうけど! 蕎麦や寿司といった、その道の職人さんのつく るものには、オリジンを感じますし、これは永遠に残るものだと思います。

 もうひとつ、外国に行ったときに食べる、変わった日本料理とかが好きです。ネギ巻きとか、あとカリフォルニア料理も好きだったりしますね。そこからは、 料理好きとしての佐藤に対してのヒントがあったりするのです。僕は、異種バトルの料理が好きです、どこかで食べた料理のネタを変えて、違うモノをつくる。 だいたい、外国へ行って帰ってきたら、現地の料理を再現したくなります。そしてそこにJ-TASTEを足してみたり、そしてなにかちょっと違うものができ たり、そういうのが楽しいですね。

 酒に関していえば、これはつくると密造ですから、飲むしかありませんね。食事中のお酒は別として、ひとりでバーのはしごが大好きです。だいたい1日に4 件くらい、多いときだと8件くらいはしごをします。一軒1~2杯ずつです。店の雰囲気、人、客層もさまざまなお店にいきます。何となく店に入ってから飲む ものを決めるので、さまざまな種類のお酒を飲みます。お酒に貴賤はありません。

 場所。海も好きだし、山も好きだし、都市も好きです。ただ、一番長くいられるのは、都市のような気がします。住んでいるのも都市ですしね。たとえば旅行 へ行くにしても、アジアの都市を歩きながら探検すると、熱射病になりそうだし、スコールにふられたりするし、物売りの人はついてくるし、お世辞にもあまり 衛生的じゃなかったりする。でもなにか、知らないものがありそうな、そんな都市の混沌や猥雑に刺激を感じます。

 まあこのように一口で好きなものといっても、考え始めるとあれこれどんどん出てくる。これって、なかなか不毛な質問だったのでしょうか? (過去のインタビューで答えてくださった方々、ご協力ありがとうございました。いま心底そう感謝しております)

 僕の場合、結局好きなものは、オリジンを感じるものだとわかりました。最近、友人と話していて、こんなことを聞きました。その友人の小学生の子どもがビ ジュアル系のCDを聞いていたらしいのですが、友人が自分の持っていたDAVID BOWIEのCDを聞かせたようです。僕も、それは正しい!と思いましたね。DAVID BOWIEだってBLUE EYED SOULといわれたりしています。ぼくもBEATLESやSTONESから黒人音楽を知りました。入口は、どこから入ったとしてもいい。でも、そこから広 がり、オリジンを探す努力をしてほしい。僕自身も、いろいろなモノを見て、考え、そして自分を知り、今後の創作に役立てたいといつも考えています。


倫理観が違うということが、一番考えさせられます
たとえば、ゴミを路上で捨てる人


倫理観が違うと いうことが、一番考えさせられます。たとえば、ゴミを路上で捨てる人、路上でコンビニめしを食べてそのまま置いていく人。ペットを飼っていて死んだら生ゴ ミで出す人。目上の人にタメ口を使う人。ちゃんとした寿司屋のカウンターで平気で煙草を吸う人。禁煙席で煙草を吸う人。煙草をポイ捨てする人。授業中に携 帯を鳴らす人。(ほんとうに一度あったのです。僕が教えている大学で、あろうことかコソコソ話し始めたのです)
 
 もちろんそれ以上の倫理観の違いは論外です。僕もすべて完璧とはいえませんが、倫理というのは、己を知ること。オリジンを知ること。義理、人情、礼儀、 身分その他もろもろを知らないと、すべてはだめだと思っています。そういうところから、その場の空気を読み、社会や人間関係がうまくいくのではないかな。 もちろん、国家や宗教その他によって倫理観は異なりますから、画一的にいえませんけれど。ただどこかに、そんな枠をはるかに越えた大きな共通認識が存在し ている気がしますね。でなければ、世界中の人は民族や宗教を越えて愛しあえないハズだものね。でもこれはやっぱりうまくいかないんだな。



 

僕 は、基本的にはグラフィックデザイナーが基本です。ただ、仕事をしていくうちに、コンピュータと出会い、大好きだった音楽をつくり、映像をつくり、本をつ くり、ゲームをつくりといったように、どんどんボーダレスになっていきました。クリエイティブには、「ちがいはない」を合い言葉にさまざまなメディアで仕 事をしてきました。いつのまにか、趣味や興味がどんどん仕事になりました。いまは、僕のさまざまな世界でやってきた経験を、このマオマオネットというサイ トで活かしていければいいなと考えています。人とのつながりもそうだし、クリエイティブ表現もそうだし、ゲームで培った企画とかアイデアもそう。いままで 得てきたことが全部つながっていく場になっていければいいですね。
 知らない人もいるかもしれないけれど、マオマオネットは2000年5月にスタートしたんです。で、2001年の5月で1周年を迎えた。その間もいろいろ な試行錯誤をしながらやってきました。webって完成スタイルがないメディアなんですよね。毎日生き物のようにぐにゃぐにゃ動いている。だから楽しい。な んでもすぐ実行して、ダメだったらまたちがうことにチャレンジする。そんなことの繰り返しがとっても楽しいメディア。そして、継続は力なり。おかげさまで だんだんとヒット数も上がってきました、マオマオネットは、これから10年後まで続けていけるサイトになったらオモシロイな。そう考えてます。いまは、ま だまだ力不足ですが、「ここにくれば楽しいぞ」とか「なんかオモシロイ」、そう感じてもらえるような、なんでもアリのサイトにしていきたいですね。
 僕個人の10年後の予想はつきませんが、僕の好きなものの中で、仕事ではなく唯一の趣味としていられる、骨董・食・酒をいかして、たとえば、ちょっと懐かしい、趣味でやってるようなバーの親父でもできてればいいかな? どうだろうか?
(2001年11月)

 

Osamu Sato's Work



THE ALPHABETICAL ORGASM [O]


THE ALPHABETICAL ORGASM [S]


THE ALPHABETICAL ORGASM [D]


THE ALPHABET [VOLCANO]


THE ALPHABET [ZILCH]


THE ALPHABET [A FISH OUT OF WATER]

ENTERTAINMENT CD-ROM [東 脳(トンノウ)]

ENTERTAINMENT CD-ROM [中 天(チュウテン)]


○佐藤 理 Osamu Sato
京都生まれ。(有)アウトサイド・ディレクターズ・カンパニー代表。マオマオネット編集長。グラフィックデザインを中心にゲームソフト、音楽、映像、WEBなど、メディアを問わず制作。代表作と主な活動は、以下の通り。現在、東京学芸大学非常勤講師。

アウトサイド・ディレクターズ・カンパニー(OSD) 
URL= http://www.osd.co.jp
(会社URLが変わりました)
e-mail=info@osd.co.jp

 


毎週キャラクターを生産中『週刊キャラクター』マオマオネットで連載中

PUBLICATIONS

91年11月  作品集『The Alphabetical Orgasm』(ティエラルト・ブックス)
92年11月  作品集『Alphabetical Animals』(トムズボックス)
93年06月   著作『Compu Design -カタチの発想法』(グラフィック社)
98年10月 プロデュース作『LOVELY SWEET DREAM』(メディアファクトリー)

MUSIC CD

94年10月 TRANSMIGRATION(ソニー・ミュージックエンタテインメント)
95年10月  EQUAL(ソニー・ミュージックエンタテインメント)
98年10月  LSD AND REMIX(ミュージック・マイン)

DIGITAL ENTERTAINMENT


94年4月  東脳(ソニー・ミュージックエンタテインメント)
94年9月 The Esoteric Retina -秘密の網膜- (ソニー・ミュージックエンタテインメント)
95年7月  Eastern Mind -東脳international版-(アメリカ:ソニーイメージソフト/アメリカにて発売)
95年10月 中天(ソニー・ミュージックエンタテインメント)
97年3月  ローリーポーリーズの七転び八起き(シンコー・ミュージック) (1996マクロメディア マルチメディア・アワード キッズウェア部門ファイナリスト選)
97年12月  ローリーポーリーズの世界旅行(シンコー・ミュージック)


PLAYSTATION TITLES


98年10月  LSD(アスミック・エースエンターテインメント)
99年8月  東京惑星プラネトキオ(アスミック・エースエンターテインメント)
00年3月  リズムンフェイス(アスミック・エースエンターテインメント)

AWARD


92年 アドビデザインコンテスト '92 特選受賞
93年 デジタル・エンタテインメント・プログラム (ソニー・ミュージックエンタテインメント主催)作品部門・人物部門 最優秀賞受賞
94年 マルチメディアグランプリ'94 (財団法人マルチメディアソフト振興協会主催)
MMAアーティスト賞受賞

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次回2002年1月には、このスペシャルページにて、新春特別企画豪華執筆陣参加(長いぞっ!)総勢48名による『マオマオいろはカルタ』を、フリーペー パー連動企画でお届けいたします。2002年2月からは、インタビューコーナーもリニューアルして再登場いたしますのでお楽しみにね!


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