FORE! フォア! DEPと『東脳』 マルチメディアクリエイターをめざせ! 4-5月号で、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント主催のイベント、デジタル・エンタテインメント・プログラム(DEP)'93について紹介した。これは、同社が、マルチメディア時代の表現者としての才能を持った人を発掘し、その活動を支援しようというオーディションである。 そして、このたび、DEP'93での受賞作品が市販ゲーム化された。最初のDEP出身の商品となったのは、プロコースで優秀賞をとった佐藤理(おさむ)氏の、『東脳(とんのう)』というゲームだ。 これはマッキントッシュ用のゲームで、自分の奪われた魂を探すインタラクティブ・アドベンチャーゲーム。佐藤氏が創った東洋風の世界「東脳」の中で、3DCGのキャラクタが動きまわり、主人公は自分の魂を探して9度死に9度生まれかわる。キャラクタデザイン、ゲームデザイン、作曲などを佐藤氏がひとりで手掛けており、その独特の世界観が楽しめるゲームだ。 佐藤氏は、OSDという会社を設立してさまざまなデザイン、企画の仕事をし、過去に何度か個展を開いたり、本を書いたりしている。 今回は、この佐藤氏にインタビューをこころみた。 ⸺『東脳』は初めて作ったゲームということですが、なぜ、いまゲームを作ったのですか。 「『東脳』という世界観を見せる方法としてゲームという形式をとりました。ただ、映像を見せる、音楽を聴かせるだけではなく、その世界の中を歩き回り、ただ見るだけではなく、より注意をはらってそれらを観察してほしいと思います。ゲームは新しいメディアだし、日本のゲームは日本の音楽などとはちがって、世界中でよく売れている。ゲームは日本から出たすごいメディアだと思います。ほかのメディアのように、ゲームアーティストとして個性的なクリエイターがどんどん登場してもよいのではないでしょうか」 ⸺DEPに応募したきっかけや、よかったことを聞かせてください。 「CD-ROMソフトを出すことは前から考えていて、『東脳』は、仕事の合間にずっと作っていました。どこかと組んでやりたいと思っていたときにDEPの話を聞いて、応募しました。応募したのは作品の一部と企画書です。私は自分のスタジオでほとんど必要な機材を持っているから、機材などの援助はあまり受けませんでしたが、世界ブランドの「SONY」が宣伝や販売をやってくれるということが、なんといっても大きなメリットですね」 ⸺DEPに応募をしようとする人に、なにかアドバイスを……。 「音楽でもCGでも、なんでもいいから、これをやっていれば楽しい、自分はこれが好き、ということを、しっかりアピールしてほしいです」 DEP'94の作品応募が、もう始まっている。締め切りは9月30日まで。作品といっても、いきなり佐藤氏のような完成度の高い作品を応募する必要はない。音楽、CG、または企画書でもビデオでも、自分のやりたいことを作品にこめて、どんどん応募してほしい。そこにキラリと光る何かが入っていればいいのだから。くわしい応募要項などの問い合わせは、〒107 東京都港区南青山1-1-1新青山ビル西8F(株)ソニー・ミュージックエンタテインメント ニューメディア室・DEP'94事務局資料請求MF係(☎︎03-3475-6900・平日の10:00~18:00)まで。問い合わせ時には自分の住所、氏名、電話番号を忘れすに。 [pic captions] 5月21日に発売にった『東脳』。中央の緑の顔(これが実は「東脳」という島なのだ)は佐藤氏がモデル 自分の個展のポスターなどが並ぶOSDオフィスにて。オフィス内には、本格的なレコーディングスタジオなども設置されている ゲーム中で手に入る、この「東脳図絵」というアイテムがマニュアルのかわりになっている 生命の樹「ミンケシュ」の根元で、主人公は目、鼻、囗を選ぶことによって何度も生まれ変わる DEP'94の締め切りは9月30日なので、夏休みを使ってじっくり作品作りをするのも悪くない [text on right side] ■COMPU EXPO佐藤理展■7月8日(金)〜11日(月)の4日間、12:00〜19:00に、東京の天王州アイル内「スフィアメックスホール」(JR浜松町よりモノレール約5分。天王州アイル駅すぐ)にて、佐藤氏のグラフィックス作品を中心とした展覧会が行われる。問い合わせは、コンピュエキスポ事務局/(株)イルミナティ(☎︎03-5453-1681)まで。